ミュージカル「エリザベート」6/8昼公演を観劇
日本ではチケットが取りづらい作品としても有名な人気ミュージカル「エリザベート」を観てきました。
音楽の都ウィーンで生まれたこのミュージカルは圧倒的な音楽の力と退廃美に彩られ、実在したオーストリア皇后エリザベートの一代記を時にリアルに、時に幻想的に描いたストーリーが印象的です。
演出家曰く「レ・ミゼラブルなどの根幹産業の隙間を埋めるために上演したらここ(帝国劇場3か月公演全日即完売)まで成長した」wというモンスター作品です。
日本初演は1996年に宝塚が先んじ、その後2000年に東宝演劇が男女版を上演しているので宝塚作品というイメージが強いかもしれませんね。
噂では宝塚が権利を持っているので主役級の女性キャストは宝塚出身者以外はキャスティングされないとかなんとか。
斯く言う私も大好きなミュージカルなので、何度か観劇する予定です。
本当は全キャスト網羅して初日から千穐楽まで見守りたかったのですが、初日である6/7はチケット戦争に敗れ叶わず…
ですが、W・トリプルキャストの初日である6/8の昼夜公演は観劇することが出来たので感想を残しておきたいと思います。
役替わりのメインキャストは
トート(黄泉の帝王):古川雄大
ルキーニ(皇后暗殺者):成河
少年ルドルフ(子役):大橋冬惟
という組み合わせでした。
舞台のあらすじについては公式等に投げるとして←
新キャスト中心の感想をざっくりと。
メインキャストがルキーニとゾフィー以外みなさん新キャストということで、非常に初々しく若々しい雰囲気で新鮮でした!
加えて初日ですからキャストも客席も独特の緊張感に包まれていて。
エリザベートといえば豪華絢爛でありながら重厚感や陰鬱さをヒシヒシと感じる、決して楽しい作品ではないんですが、初日はまだ探りながら…という部分が見えたように感じます。
まずはタイトルロール、エリザベート役の愛希れいかさん。
実は前回公演の時にこの役を演じられた女優さんが、私の中でトラウマになってまして。
今回の再演が発表されたときに彼女が居なくてホッとしたのと同時に愛希さんの経歴が彼女とほぼ同じだったことにかなり不安を感じたものでした。
しかし周りから「愛希さんは大丈夫!」と太鼓判を押されたので避けることなくチケットを取りました。
ドキドキひやひやしながら初日を拝見しましたが…
うん、とても良かったんじゃないでしょうか!?
特に1幕では緊張がこちらにも伝わってくるほどで歌の所々に震えるような不安定な響きがあったりもしましたが、休憩挟んで2幕になるといくらか落ち着いたように見えました。
「私が踊るとき」のナンバーが特に愛希シシィの力強さがよく出ていて、凛とした歌声から目線の使い方までかっこよかったです。
「私だけに」は後半にかけてどんどん盛り上がっていく感じが出るともっと良いかなーと思いました。
「パパみたいに」の歌い終わり、家庭教師に叱られたときに「フンッ!」て拗ねて見せてたのがとてもかわいかった。
エリザベートを意志が強く生命力に溢れた女性として丁寧に演じられていたと思います。
黄泉の帝王トート閣下は、前回まで3期続けて皇太子ルドルフを演じていた古川雄大さんが出世してw帰ってきました。
登場シーンからその美しさに度肝を抜かれました。
いやーーーーー美しいは正義。顔が小さい脚が長い腰が細い指先まで美しい。
死は概念だから性別が無くて、トートはエリザベートにとって最も魅力的な姿をしている。というのが実にぴったり。
美しいだけじゃなくて歌でも持ち味の甘い声が何とも艶やかに人々を誘惑しているようでとにかく魅惑的なトート閣下でした。
劇中に何度も「エリザベート」と口にするのですが、それが何とも甘ったるくてセクシー。
「最後のダンス」の歌い方がかつてのマテ・カマラスさん*1を彷彿とさせるロックさでとても良かったです。
ロミジュリの時も思いましたが、やはり古川さんはフェイクがカッコいい!
リズムを一度崩してからメロディーラインに乗せるようなアレンジを各所に散りばめていて、濃いエリザファンであればあるほどその自由さや意外性に驚くのではないでしょうか。
まだまだ模索中であったり芝居に馴染んでいない部分も窺えましたので、公演を重ねていくにつれてもっともっと自由に、そして凄みが増していくことを期待しています。
皇帝フランツ・ヨーゼフ役はこれまた2012年に古川閣下とトリプルキャストで皇太子ルドルフを演じていた平方元基さんが、7年を経て息子から父親となりカムバックです。
一番驚いたのは老けっぷり!!
フランツって劇中もの凄いスピードで老けていくんですが、そのメイクがすさまじくて。
そこまでやらんでも…と思ったんですが、もともとが若々しくてイケメンな方なので、多少オーバーにしないと老けて見えないのかもしれませんね。
中年期が病人のような窶れメイクでビビりました←
平方さんを観るのはやや久しぶりで1年ぶりくらいだったのですが、声にうんと深みが増していて驚きました。
フランツのキーポイントである「老い」を声の演技で表現することが難しそうな印象を受けましたが、後半の「夜のボート」~「悪夢」にかけての感情の溢れ方がとても好きでした。
それまでは自分をよく律し感情を抑えている人物のように見えたフランツが、なりふり構わずエリザベートを求める様が愛に溢れる一方もの悲しくもありました。
なんと、東宝エリザでは歴代最高齢でのルドルフ(32歳)だそうで!
海外だと結構おじさんぽいルドルフも多いのに、日本ではルドルフは若手登竜門的扱いなので30代で演じることってほとんど無いんですよね。まぁ、享年30歳の人物なので仕方ないか…
前回の古川ルドルフは当時28、29歳とかでギリギリだと言われ、20歳そこそこの京本ルドルフは小柄な見た目もあって幼すぎると言われていたのを思い出します。
何はともあれ三浦ルドルフ、第一声が低くて驚きましたww
ロミジュリで観た時より更に低くなっているような…?
低くてハスキーな声やパンクロックが好きな方はすごく好きな声だと思います。
私は…うーん。やっぱり観るならストプレで観たい役者さんかなぁと思いました。
演技は好きだし舞台メイク映えする役者さんで存在感もあって好きなんですけど。
歌となると、特にルドルフのように高音が聴かせどころとしてある役の場合、高い音を高く聞こえるように歌える方が私は好きです。
三浦ルドルフは確かに高音も綺麗に歌えているのに、1オクターブ下を歌っているように聴こえてしまいます。
革命の意思に燃える先見の明を持った”賢すぎた”皇太子ルドルフの側面を強く押し出したようなお芝居はとても良かったです。
そして続投キャストのルキーニ役、成河さん。
フレッシュな新キャストが揃っている中で、成河ルキーニの安定感・巧みなストーリーテリングがとにかく頼もしかったです。
前回公演では甲高く叫ぶように歌い上げたりトートを狂信的に崇拝していたりメイクもピエロのようなペイントを施していたりと、狂いっぷりが凄まじかったのですが、今回は少し落ち着きが出ていたように感じました。
この物語はルキーニが語り紡ぐ虚構(キッチュ)である、という説得力は以前にも増して、舞台を支配する力に圧倒されます。
先日観た「レベッカ」のダンヴァース夫人が素晴らしかったのですが、ゾフィーも低音の圧が増しているようで迫力抜群でした。
涼風ゾフィーは老いてもなお美しい姑で、シシィに「私を妬んでる!」といわれ「馬鹿げたこと言わないで」とあしらうのがとても似合いますw
「小娘に嫉妬するほど落ちぶれていない」と言わんばかりの美貌と権力を持っていたのに、徐々にその立場を追われていき小さくなっていく姿に悲哀を感じます。
でも、フランツとヘレネのお見合いの「計画通り」での「安産型だわ」の時の表情が一番好きだったりする。
メインキャストはこんなところでしょうか。
公演に通い、DVDになって何度もリピートしている2016年版からさらに音楽的な変更や演出変更、美術変更などがあってキャスト以外の面でも目新しいところがたくさんでした。
この日は夜公演も続けて観劇したのでそっちの感想も書けたら書きたいなと思っているところです。
やっぱりエリザベートは楽しい!