「忘れる」ということの難しさ。中国ドラマ「東宮」 #1~#52+α視聴完了
2019/5/13 23:00過ぎ、全52話と番外編まで視聴完了しました。
いやぁ…泣いた。
ウッウッとしゃくりながらボロボロ泣きました。
悲しくて辛くてたまらない悲劇に憤慨したくとも、そうなるしか無かった道筋に思えてしまったことがまた切ない。
前記事でも触れていますが
改めて強調しておきたい。
中国ドラマ「東宮」は悲劇です。
ネタバレとか結末を知りたくないって方もいると思います。
でも私は知った上で覚悟をして見てほしいと思うのです。
もちろん、「誰々がこうなってこうなります」というネタバレはしませんが、このドラマは明るく軽い気持ちで楽しめるドラマではない。という前提で見てほしいのです。
見れば見るほど悲しくなるしやるせない気持ちになるし見ていてしんどくてたまらないのです。
それを知らずに見始めてしまって「幸せな結末を信じて見続けていたのにどんどん悲しくなった…」とガッカリされてしまうよりは、「悲劇である」ということを踏まえた上で見て、52話という旅路の果てに迎える結末に納得してほしい。
というのが「東宮」をこれから見ようと思っている方、見るかもしれない方に私が強く主張していきたい部分です。
さて本題、全話を視聴しての感想です。
まずは散々「悲劇」だと伝えてきた結末について…
結論から言うと、私は嫌いではなかったです。
むしろ良かったなーとも思える結末でした。
やはり最初からハッピーエンドにはならないとわかっていると、自分の中で展開への落としどころが出来る気がします。
芸汐伝も最初にそれを知っておけばよかったのかもなぁ…そしたら見終えた後あんなに憤死しそうなほどフラストレーションがたまることも無かったと思う。w
「東宮」を見終わったあとに感じたのは、人の情や業からは決して逃れられないということ。
キャッチコピーや主題歌にも出てきて物語のキーとなる「忘川」は飛び込めばその人の一切の情を忘れさせ、それによる苦悩もまた忘れさせるという伝説の場所。
「東宮」ではこの忘川に飛び込んで忘れてしまった承鄞(顧小五)と小楓の2人と、全てを覚えていて2人を見守り続ける人々との対比がとても印象的でした。
見守り続ける人その1、承鄞の従兄であり小楓の師父でもある顧剣。
大罪人の家族という濡れ衣のために世捨て人のように生きている顧剣は小楓を心から愛しているものの、小楓は一国のお姫様であり太子妃となる身。
身分の違いに苦しみ小楓への想いを押し殺しながらずっと側で支え続けている切ない二番手男。
48話は顧剣に惚れるしかない回でした…
辛く哀しい人物でしたが、あの瞬間の顧剣はきっと世界一幸せな男だったと思う。
なのに番外編に登場しなかったのでちょっとさみしい。
見守り続ける人その2、丹蚩族の末裔で小楓の護衛の阿渡(アドゥ)。
一族の仲間たちを滅ぼされた阿渡にとって唯一のよりどころは小楓。
阿渡は小楓が忘れてしまった記憶を覚えているだけではなく、家族を失った苦しみもまた同じく味わっている人物です。
小楓の痛みに共感してしまう阿渡は自ら唖者(口がきけない人)として振る舞い、ただひたすらに小楓を守り続けることだけを考えて生きていきます。
寄り添いあって生きる2人の姿が可愛らしくも可哀そうで…
阿渡の存在は小楓にとってすごく大きくて、それが最終話にもよく出ていたと思います。
阿渡は要所要所でトリガーになっていた気がする。
公式からは2人の絆をピックアップしたPVも出ています。
そして見守り続ける人の最後、承鄞の側近の裴照(ペイ・ジャオ)将軍。
武骨で生真面目な軍人気質ながら、とても優しい心の持ち主でした。
きっと東宮に出てくるメインキャラの中で一番幸せになれた人。
承鄞の側近として寄り添いつつも小楓を陰ながら支える裴将軍は小楓に偏っている顧剣と阿渡とは違い、小楓にも承鄞にも幸せになってほしいと願っていた唯一の人だったかもしれません。
承鄞の苦悩を知っていたのも裴将軍だけでした。
「顧小五はもう死んだ。死人のことなど忘れて私のことも考えてくれ!」と小楓に叫ぶ承鄞の姿を悲痛な表情で見つめる裴将軍が切なかったです。
それにしても…番外編、どうしてそうなっちゃったwww
それから、振り回された哀れな人、承鄞の側室・趙瑟瑟(チャオ・スースー)。
瑟瑟は承鄞の目的のためにその一途な想いを利用されてしまう可哀そうな娘。
心から承鄞を愛し、承鄞もまた自分を愛してくれているという自信から周りの雑音にもめげず強くいられた瑟瑟。
小楓の存在が承鄞を揺さぶっていることに気付くと少しずつ自分を守っていた鎧が崩れ落ち、暴走してしまいます。
ドラマの中で小楓が何度か瑟瑟のことをうらやましいと話すのですが、確かにそうだな…と思えます。
瑟瑟はこの複雑で素直になれない東宮の人々の中で唯一自分の気持ちのままに行動できた人でした。
だからこそ承鄞の仕打ちが人でなしそのものに感じたわけですが…
ちなみに、瑟瑟は時おり日本風(遊女風)の衣装と髪型をしていることがあります。
そういうスタイルをしている時は決まって嫉妬に駆られている時なので、なるほどやはり悪役=日本風なのだな…と苦笑いでしたw
日本人から見るとどうしても変てこな日本風としか感じないのですが、抗日ドラマというジャンルまである中国では違う見え方になるのでしょう。
その他にも一人ひとりのキャラクターが濃く描かれていて、悪役にも人間として共感できる弱い部分がしっかりと見えたのが素敵でした。
皇后は「実の母を殺した養母」という明確な悪であるにも関わらず、承鄞を心から愛する息子として育ててきたのだという描かれ方をしていたのは新鮮でした。
反対に、優しく穏やかな”大おばあ様”大皇太后が物語の後半、王宮に波乱続きとなるにつれて「皇帝が倒れたとてその息子が王位を継ぎ、また倒れては孫が継ぐ。その繰り返しよ」と言い捨てて宮殿に籠もる姿は冷徹なようでリアルな姿だな、とも。
自分のエゴのために愛する人を傷つけた承鄞は忘川によって記憶を失い、再び愛した人を傷つけ続けました。
過去を忘れてしまったがために過去の過ちを繰り返してしまい、記憶を取り戻してもなおその本質は変えることが出来なかった。
小楓は自分を愛するあまりに暴走する承鄞をこれ以上見ていたくなかった、承鄞を止めたかったのだろうと思います。
自分が愛した顧小五がいなくなってしまうことが怖くて、愛せなくなるのも怖かったのかもしれない。
承鄞は稀代の愚か者で、彼の業は重く深かった。
エンディングの砂漠のカットはとても寂しい風景に見えて、そこでまた泣けてきました。
「愛している」というというだけではどうにもできないことがあり、忘れてしまうということは誰かの想いを捻じ曲げ傷つけていることでもあるかもしれない。
悲劇的な結末ではあったけれど、いろいろと考えさせられた作品でした。
悲しいのも泣くのも嫌いだけど、延々とループして幸せな2人を見たいな~とも思ったり。
YouTubeでは番外編として現代に舞台を移した「東宮」ミニドラマが見れます。
これが悲劇に嘆き悲しんだ心を和らげてくれました。
パート4まであります。
本編と違ってアテレコではない俳優本人の声なのでそこもお楽しみポイントの一つ。
この番外編で初めて気づいたけど、承鄞役の陳星旭の手がめちゃめちゃ美しい!!
手フェチにはたまらない、薄くて細長くて骨ばった綺麗な手をしてます。
陳星旭、96年生まれの23歳という若さながら子役出身ということでキャリアはベテランですね。
顔立ちはまだ幼さが残るのに表情が大人びていて甘さと鋭さがある承鄞の二面性を魅力的に表現していてよかったです。
顧小五と小楓は本当に可愛くてずっと幸せでいてほしいカップルでした。
東宮はドラマの評価も高く人気もあったようなので、きっと日本にもやってくるのではないかな?とおもいます。
そしたら私もまた見て号泣するんだろうな…
悲しくて切ないけれど美しい東宮の世界をまた味わえる日が来ますよう。